わたしの好きな我孫子の道 シリーズ その9                                前田 毅(会員)
              「子の神道」を歩いて感じた我孫子精神の真髄
●「子の神道は祈りの道」実に本質を突いたいい言葉であると思う。その真髄を味わいたくて参加した。十二分に味わうことが出来たと思う。

●6月15日(水)朝、天王台駅南口に集合し、足助リーダー・松村案内人の先導で歩き始めた。爽やかな夏の日差しが早くも頭上から照りつける。

●「天王台西公園」はこの地区が素晴らしい住環境を整えた新しい街並みをスタートさせた出発点の心意気を誇らしげに物語っている。竣工記念碑には昭和51年建立と記されているから凡そ40年。天に向かってすっくと伸びた樹木がその歴史の証言者だ。木陰を求めてベンチでくつろぐ人、語らう人、キャッチボールを楽しむ親子、など人々の生活と癒しの場所になって息づいている。

●我孫子の市街地は、我孫子台地を背景に手賀沼を舞台に見立てた自然空間の広がりに、丘陵地と平地とそれを繋ぐ多くの坂道が絡まり合って起伏に富んだ一大空間として成り立っている。東寺の立体曼陀羅のようだ。その自然景観を舞台に、天王台地区は高層住宅と戸建て住宅とが見事に調和して融合し合い、巧みに配置された緑が豊かな縁取りを見せている。景観賞を受賞した住宅のありようを見ると、建物の縁取りが凹凸に富んでいて、無機質で直線的な様相は極力抑えられている。そこに緑の樹木や草花が取り入れられ心を和ませる。住民の手によるのであろう美観維持の心遣いが嬉しい。

●マルエツ前を通り抜け「イースト情報」社に立ち寄り、社長夫人にご挨拶。ここから発信される様々な情報が市民生活を活性化しているのは間違いない。これからも「我孫子の景観を育てる会」の応援をお願いして辞する。

●成田線を横切り最勝院の建物を眺めながら高野山地区に入る。「子の神大権現道」と記した背高の道標が建っている。常夜灯でもあったに違いない。足元には「子の神道」の小さな道標も。いずれも長い年月が石の表面を削り取って彫られた文字を読み取ることが難しい。ゆっくりと緩やかな坂が手賀沼に向かって私たちの足を導いてくれる。そして、突如として歴史の道が現代の喧騒と交わり切り結ぶ。足下、県道船橋我孫子線を行き交う車の往来によって、私たちの意識は古代の趣を断ち切られ現代社会生活へと呼び戻される。車に撥ねられないよう恐る恐る横断する。そして僅か数十メートル坂を下ると再び古代の夢空間へと立ちかえる。

●目の前には「子の神大黒天」への急峻な坂道が続き、さっきの喧騒は一気に消えてしまう。この街の面白い不思議なところだ。言葉には表せない魅力と言ってよいであろう。

●大黒天の境内は静謐・静寂が支配している。私は真言宗のお寺が持っているこの雰囲気が大好きだ。第8祖遍照金剛(空海)の威厳が今に伝わってくる。本堂右手と境内の南端にそびえる大銀杏の見事さ。秋にはどんなに見事な黄葉を見せてくれることだろう。頭上に降りかかる黄葉の姿を想像していると、ふとこんな詩を思い出した。
子の神道散策
・子の神道散策 瀬戸邸前

●"金色(こんじき)の 小さき鳥のかたちして 銀杏散るなり 夕陽の丘に"(与謝野晶子)
旧村川別荘は境内の真下に広がっている。村川氏親子は手賀沼を望む自然空間の見事さもさることながら、子の神の持つ静謐・静寂さを好まれたのではないだろうか。子の神様が村川別荘を抱きかかえ守っているようだ。庭内の全体に神秘な精神世界の広がりが感じられる。吉澤会長らがこの別荘を世に知らしめるについて大層なご苦労をなさったとか、「我孫子の景観を育てる会」の根本精神もここに根差しているのだと一人ながら感じる。

●引返して"世界で一番小さな蝶ちょ園"「あおむしくんのお家」を訪れる。何故だか昔習った「虫愛づる姫君」(堤中納言物語)を思い出した。自然を愛する心は時代を超えて息づいているようだ。レイチェル・カーソン女史に見せてあげたかった。

●歩を進めると白樺派の文人たちが邸を構えた跡が次々現れる。滝井孝作・志賀直哉・杉村楚人冠・・・。近代我孫子精神を体現した一角だ。途中瀬戸さんのお宅に立ち寄り冷たいお茶とお菓子を御馳走になる。甘露甘露。ご夫妻の笑顔はこんな雰囲気が育てたものであろうか。

●楚人冠が「白馬城」と名付けて我孫子生活を楽しんだ楚人冠邸はこの秋の公開を目指して復元工事が進んでいる。古い絵図や写真、日記などを通して得たイメージを偲びながら、門外から覗き込み往時を偲ぶ。今につながる手賀沼の維持保存は、この地に楚人冠を中心として集まった人々の活動のお陰で始まり大きな流れになっている。私たちは、百年後の人たちに何を残すのか、残せるのか。大きな課題である。

●最後に我孫子駅前に出てコビアン�兇巴訖�をとる。快い疲れと深い満足感を冷たいビールと白ワインで癒した。2時間弱の散策は「我孫子の景観を育てる会」の発祥精神を胸に刻みつける印象深い散策であり、得るものが多かった。楽しかった。

■もどる