文学作品の中の<景観> -3- 我孫子ゆかりの二人の作家から探る 足助 哲郎(会員) |
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●作家、前日本文藝家協会理事長で日本近代文学館理事長の坂上弘さんは、東京に生まれて、会社勤めで方々に移り住んだのち、いまは我孫子を終の棲家としておられます。同じく作家で、第141回芥川賞受賞の磯崎憲一郎さんは我孫子に生まれて、ビジネスマンとしても活躍しておられ、いまは東京にお住まいです。ともに作家と勤め人という「二足の草鞋」をはかれ、人一倍ご多忙の人生を送られていますが、お二人にとって、我孫子が大切なところであることを示す作品とインタビュー記事をご紹介します。 ●まず、坂上さんの小説「田園風景」(講談社、1992年9月28日刊)には、'86〜91文学誌「海燕」などに執筆された短篇「田園風景」など9篇が収録されています。 ●そのなかの出張先での出来事などを綴った物語のあとがきで、坂上さんは「住まいが利根川から遠くないので気が向くと河川敷の土手まで散歩にゆく。数キロにおよぶこの土手は、春夏秋冬、とにかく季節感にあふれるところである。どんな風が吹いているのか、どんな草が生えているのか、どんな虫が這い鳴いているのかは、行ってみるまでわからない。そしてそれから何を感じるかも、行ってみなければわからない。こうして土手に行く途中で、よく忘れかけていた小説の一場面が思い浮かぶ。自分が若い頃読んで感動を覚えた自然描写が、それだけのものではなかったことに気がつく。たとえば、志賀直哉の「城の崎にて」の、一個人にとっても小生物にとっても、死とは、思いもかけないところにおこるのだ、というようなところを強烈な実感とともに思い出したりする。」と我孫子について語っておられます。 |
●一方、磯崎さんの芥川賞受賞作「終の住処」では、我孫子は作品の中には登場しませんが、2011年3月3日付け毎日新聞夕刊の「私だけのふるさと」というインタビュー記事の中で、磯崎さんは「小学校の授業が終わると小川や池で釣りをしたり、オタマジャクシを捕まえたり、草野球をしたり、塾通いなど一切せず、本なんて全く読まず、暗くなるまで外で遊んで、家ではテレビ。でも、一番のお気に入りは雑木林。社宅の周りに森が広がっていて、夏は背丈を越えるほどに茂る雑草を分け入って行くと、クヌギやクリの木にはクワガタやカブトムシが樹液を吸いに集まっていた。花が咲く時って、一晩で一斉に咲くんですよ。枯葉もぱっと落ちて、その上に寝ころぶと、ふわっと受け止めてくれる。自然が変化するさまを日常的に感じられる空間でした。季節によって森もすむ鳥の種類も違う。引っ越してから30年以上が過ぎてから訪ねたら、社宅の跡に中学校が建っていて、雑木林も消えていましたが、曲がりくねった起伏の多い道も、どこか東京とは違う柔らかな光も当時のままでした。過去は復元不可能だけど、僕は今もあの雑木林に守られて生きている。そんな気にさせる、もう一度、暮らしてみたい街ですね。」(一部略)と、ふるさと我孫子への熱い思いを語っておられます。 |
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あびバスに乗って景観を楽しもう! あびバス景観散策マップが完成 ●我孫子市営"あびバス"沿線の景観にスポットを当てて、新しい我孫子の景観を楽しもうという企画を、当会と我孫子市との協働で実現した。今回発行したマップはその第1弾で、「台田・船戸ルート編」。このユニークな試みは反響を呼んで、朝日新聞(3月24日)、読売新聞(3月20日)でも大きく取り上げられた。 ●マップはA3四つ折りで携行に便利な体裁になっていて、フルカラーの写真入り散策ルートガイドが、散策のお供にぴったり。アビシルベ、アビスタ、近隣センターなどで配布している。 ●あびバスは、この他に4ルートあり、今後順次発行していく。あびバスの乗客が増えて、運賃収入増に結びつけば嬉しいことだ。皆さん、どうぞマップを持ってお出かけください。 |
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