石澤ミヨさんの作品に出合って                                       滝日 一子(会員)
「凛とした画風 遺作公開」として紹介された(3月15日 朝日新聞)故石澤ミヨさんの絵とアトリエを見る機会があった。東我孫子の近隣センター"こもれび"の真ん前のお宅である。

記事に水彩画のような透明感がある、と書かれていたが、どの絵もやさしい色合いで、ほんわかと体を包んでくれる気がしたのである。それに対して、石膏像や木彫にみられるたくましさは、石澤さんの芯の強さが表現されているのであろうか。図録「石澤ミヨの造形」(監修:岩村守氏 陶芸家 当会特別会員)の表紙は、ミヨさんのやさしい画風が良く活かされ、私の最初のイメージと重なり、まさにぴったりと納得したのである。

日本美術院展に3回連続入選後、会友に推挙された。特許庁意匠課に勤める傍ら勲5等の叙勲を受け、当時の長官の奥様高田寿子様に非常に可愛がっていただいたというのも、画ににじみ出るお人柄の故であろう。


柿の木坂に住まわれた長官宅の御門が、石澤さんの自宅内にある茶室の一部になっているが、140坪余りのお庭、お宅がご遺族により売却される予定で、この貴重な自然、景観としてのお庭はもちろん、この御門の行く末も気になることである。
自由が丘にある菓子店モンブランの包装紙が、東郷青児のブルーグレー調の人物の絵で、今も美しく存在しているように、石澤さんの絵が後世にいつ迄も残るように願って止まない。

※石澤ミヨ 
北海道小樽出身 東我孫子の自宅アトリエで三十年余創作活動を続け、160点余の作品が残されている。
2013年春他界された。享年92。

※石澤ミヨ遺作展
2014年3月16日〜3月23日 石澤ミヨ アトリエ(我孫子市 東我孫子)  展示作品80余点
近い将来、屋敷、アトリエと野趣豊かな庭のあるこの土地が売却されるため、岩村氏を中心に関係者が開催したもの。
 白樺と梅原とルノワール                                                       富樫 道廣(会員)
先日、梅原龍三郎の曾孫に当たる嶋田華子さんがアビスタで「曽祖父梅原龍三郎と白樺派」という話をしたのを聴いた。

「白樺」が文章を書く人のためのものではないことは前から知っていた。とくにマネの紹介など、ルーブルで見た「オランピア」の感激や、「物を確実に掴んだ画家」などとして書かれたものがあったり、柳宗悦は「マネとポスト印象主義」展の目録序文を訳して「白樺」にのせていたこともある。

そんな白樺とフランス留学の梅原が交流あるのも不思議ではなかったが、私にはフランスでのルノワールとの関係に興味があった。

私が中学生(旧制)の頃、上野の美術学校はあこがれ。その最難関の洋画科の主任が梅原龍三郎、そうは言っても梅原の絵を見たのは、「赤富士」と「ノートルダム」のお日様だけ。

一体何を教えてもらえるものかと思った。二年先に入学した先輩に聞けば、先生は二こと目には「君たちは写実を学ばなければならない」と言うと。この先生の写実とは一体何なのかとみんなで不思議がっていたものだった。
当時の入学試験のデッサンの課題は、「ヴィーナス」。それからというもの、「ヴィーナス」とニラメッコでデッサンをしたものだった。

それがこの間、ルノワールに賞められたという、セーヌ河の上流、「モレーの風景」を見せてもらい納得したのである。
 それは正に写実であって、光り輝く緑と、赤い屋根の家並びが目を釘づけにした。質問の時間がなくて、あとで嶋田さんに聞いてみると、ルノワールに言われたことは「デッサンは勉強すればできるが、色彩は気質、個性によるもの」と言われたのだと言う。これが上野で画学生に毎日くりかえしの言葉だっただろうと納得した。しかしこの梅原が少しでも白樺と交流があったのなら、一度でいいから手賀沼を描いて欲しかった。
 わかりにくい地図を見て思う                                              秋田 桂子(会員)
青葉若葉の候、町中の緑が美しい。その中に桑もある。その桑の葉が蚕を育てることから絹織物工場の富岡製糸工場が世界遺産に登録勧告(6月に登録可否が決まる)されたことに思いが至った。当会は、景観散歩で一昨年11月に当地を訪れている。「先見の明」があったと言える。

                                      我孫子にもかつて製糸工場があった。現在は我孫子駅近くのイトーヨーカドー南口店と公園になり、公園の繭の形をした車止めがその面影を残している。案内板には「蚕霊塔がある」と書かれているが、その地図はどうみても、逆立ちをしなければわからないのだ。そこで、アビシルベに行って聞くと係の女性が「公園の先の、現在は駐車場になっている中の隅にある」と案内書を見ながら親切に的確に教えてくれた。

この地図は北を上にしているが、設置場所の関係で、人は南を向いてこの地図を見ることになる。頭の中で180度回転させないと、方向を理解しにくい。
絹糸を出す蚕の霊を供養した「蚕霊塔」。ヨーカドー我孫子南口店の東側公園から、さらに東の駐車場に残っている。

行ってみたらひっそりと確かにあった。せっかく訪ねて行こうと思っても、これでは分かりにくい。「八景探し」をしていた時も、分かりにくい場所に設置されていた看板を目にしたことを思い出した。あまりうるさい看板は困るし、さりとて役目を果たさない看板も困る。会員である私たちが、我孫子の観光に役立つ道標になればいいのだなと、観光シーズン真っただ中に思った。

■もどる