我孫子の景観を育てる会 景観あびこ_title 第76号 2016.11.19発行
編集・発行人 吉澤淳一
我孫子市つくし野6-3-7
我孫子景観基礎研究 その2:2020年に向けた手賀沼の"景観ビジョン"−1
                                                                            建築家・工学博士 野口 修(会員)
  リオデジャネイロオリンピック・パラリンピックも閉幕し、世界の目が東京に向き始めた。都内では、大型プロジェクトが2020年を目指して加速し、中小の工務店からは職人確保に対する不安の声も聞こえて来る。一方、オリンピック・イヤーを見据えた計画が進むのは東京だけではない。政府の地方創生新型交付金に牽引され、日本各所で"まちおこし"を唱った計画が立案されている。本論で考察する手賀沼・手賀川流域でも、沼南岸で柏市が推進する『手賀沼アグリビジネスパーク』事業の一環で、H27年より地方創生加速化交付金を活用した水上バス・シャトルバスの試験運行他が実施されたり、我孫子市が申請した『手賀沼・手賀川エリアの新たな「水辺のライフスタイル(てがてがDMO)」推進事業』が、H28年度の地方創生加速化交付金の対象事業となったりしている。交付金の対象事業ではないが、我孫子市が千葉県から移管された『水の館』および手賀沼親水広場のリニューアルも2017年の春には完了予定ということだ。リニューアル後の『水の館』には、カフェや農産物直売所などが入るらしい。 "オオバン通り"に接続して我孫子駅と手賀沼を結ぶ"手賀沼公園・久寺家線"の開通も現状H32年(=2020年)となっている。このように手賀沼・手賀川流域の景観に直接関係しそうな公共事業だけでも結構な数が挙げられる。民間事業を加えれば、流域上には、2020年までの間、相当数の計画が点在するはずだ。ところで公共事業の内、「一敷地一建物」を原則とする建設事業は、個々が決められた予算、敷地、仕様の中で完結する"点"の整備に留まり易い。点整備の問題は事業間の関係性が薄く、"線"や"面"としての相乗効果を発揮し難いことだろう。つまり、手賀沼・手賀川流域のように広範な空間の魅力向上やブランド化を図るには、流域上に点在する事業計画や観光資源をつなぐための広域連携や情報共有が重要な課題と考えられる。こうした前提の基、本論では手賀沼・手賀川流域で現在進行中の計画をピックアップし、その可能性を他所で見聞した情報も交えて考察してみたい。
■はじめに
 今夏、群馬県前橋市のまちづくり発表会に行った。競輪場のバンク内に客席が設けられ、市内外から4千人の聴衆を集めた盛大な会だった。前橋出身でJINSメガネを創業した田中仁氏が、前橋市の活性化案をドイツのコンサルタント事務所に依頼。コピーライティングを同じく前橋出身の糸井重里氏が担当した。
 "昇るか、沈むか。"という過激なコピーに地方都市の現状と覚悟を感じた。ただし、これは県庁所在他流のやり方。本論では、我孫子市や手賀沼独自の手法を探ってみたい。


下の写真:前橋ビジョン発表会
  上図:手賀沼プロジェクトマップ(H28年10月作成)
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