我孫子景観基礎研究 その2:2020年に向けた手賀沼の"景観ビジョン"−2 建築家・工学博士 野口 修(会員) |
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2-2.舟運 先日、我孫子のいろいろ八景歩き"白山のまちなみと船戸の森・湧き水の小径コース"のリハーサルに参加した際、旧武者小路実篤邸跡にお邪魔した。敷地内の視察が許可されたので、手入れの行き届いた庭園を眺めたり、ハケの道沿いにある大小2つの門にも下りてみることが出来た。ハケの道が手賀沼の水際だった当時、親交の深かった志賀直哉とは、互いの住まいを舟で行き来したという。ハケの道沿いの門は第二の玄関だったのだろう。二人共が我孫子で暮らした大正5〜7年は、ハケの道に街灯が無かったらしい。夜は月の光を頼りに風流な舟路を楽しんだものと想像される。柏市が推進する『手賀沼アグリビジネスパーク』事業では、道の駅しょうなん〜手賀沼フィッシンセンターを遊覧船で結ぶ舟運計画が進んでいる。今年で2期目となる試験運行(ぐるっと手賀沼めぐり)に乗船してみた。手賀沼の豆知識を交えた解説や船に用意した実物のハスに触る機会を設けるなど、船頭さんの工夫もあって、風景だけでは間延びしそうな約30分間の船路を楽しく過ごすことが出来た。 |
舟運といえば昨年、羽田ー秋葉原間で第1次舟運社会実験が行われて筆者も参加した。この社会実験は国土交通省を含む秋葉原・天王洲・羽田空港舟運準備会が主催したもので、第2次となる神田川周遊ミニクルーズを挟んで今年、コースバリエーションを増やした第3次実験が行われている。羽田空港から都心への移動と東京の水辺観光を組み合せた大変魅力的な企画で、羽田空港近くの運河→東京湾→隅田川→神田川へ至る船路は実に変化に富んだ景観が楽しめた。また、神田川の屋形船に横付けして行われた佃煮の船上販売や秋葉原の万世橋に到着した際の土産販売といった商業面での充実も特筆すべき点だろう。翻って手賀沼舟運を考えてみる。我孫子側の桟橋や手賀川にも範囲を広げたコースバリエーションや特産品の販売手法の開発など、実現に向けて試せることはまだまだ多いように思われる。そして何より我孫子市、柏市、印西市といった流域各市が互いの垣根を取り除いた広域連携体制を確立する必要性を改めて考えさせられる体験だった。 |
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