我孫子の景観を育てる会 景観あびこ_title 第80号 2017.7.15発行
編集・発行人 吉澤淳一
我孫子市つくし野6-3-7
我孫子景観基礎研究 その2
    2020年に向けた手賀沼の"景観ビジョン"−5
                        建築家・工学博士 野口 修(会員)
2-5. 我孫子ゴルフ倶楽部/市民の森
  我孫子ゴルフ倶楽部の12・13番ホールに隣接して「岡発戸市民の森」がある。初めて足を踏み入れたのは、ゴルフ場の改修工事が進む2012年初夏のことで、当時は樹木が密集し、ヤブ蚊が飛び交う暗い森という印象だった。改修工事後は、ゴルフ場の景観とつながる作業が進んだ。「市民の森」の密集した樹木は間引きされ、ゴルフ場を囲うコンクリート塀の一部がシースルーの鋼製フェンスに差し替えられた。先日、久しぶりに覗いてみたが、鋼製フェンスに替わった部分は、ゴルフ場の景観と馴染んで明るい森林空間となっていた。「岡発戸市民の森」のような公共の緑地は、国が決定した大綱に従って地方公共団体が具体化する。そして、この法的基盤となる都市緑地法と都市公園法の内、「市民の森」にも係わる都市緑地法では、緑化対策について2つの方向性が示されている。ひとつは"緑地の創出"で、地域ごとに緑化割合を指定したり、屋根や壁面の緑化に助成金や法的な優遇措置を与えることで、新しく開発される土地や建築の緑化を促進する
方向性である。
もうひとつは"緑地の保全"で、例えば、私有地を「市民の森」として公開する代わりに、地方公共団体が管理を請負うなど、制度を設けて緑地を守る方向性である。こうして確保された緑地は、国土交通省の大綱では"社会資本"と位置付けられ、都市緑地法の総則では"良好な都市環境の形成"と"健康で文化的な都市生活の確保に寄与する"と説明されている。しかしながら、こうした理想的な緑地を実現するには、単なる公共投資や制度設計だけでなく、市民参加型の保全活動や利活用計画など、緑地を持続的に運用するソフト面の充実が必要となる。例えば、ゴルフ場との境界フェンスを「緑のトンネル」としたり、訪問者をもてなす茶屋を整備するなど・・。「岡発戸市民の森」には、我孫子ゴルフ倶楽部と隣合う利点を活かし、自立した景観・観光拠点となって欲しい。何故なら、我孫子流のまちづくりとは、こうした手賀沼流域の拠点を掘り起こし、他の拠点とつなぐ作業の積み重ねと考えるからである。
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