我孫子の景観を育てる会 景観あびこ_title 第81号 2017.9.16発行
編集・発行人 吉澤淳一
我孫子市つくし野6-3-7
我孫子景観基礎研究 その3
    最新の都市公園事例が変える緑地景観の可能性
                        建築家・工学博士 野口 修(会員)
3-1. 事例1:『南池袋公園』の経営感覚
  東京都豊島区の『南池袋公園』を訪ねた。まずは海外の公園に来たような風景に驚かされる。公園の売店とは思えない規模のカフェは、豊島区とランドスケープの専門家が、都市公園法の特例措置をフル活用して成立させたもので、芝生広場を併設した新しいタイプの建築のようにも見える。カフェの売り上げの一部は、地域還元費として公園管理および運営費に充てられ、これ以外にもカフェ事業者には、地域貢献に関する様々な協力が求められる。選定された事業者は、事業展開だけでなく、ゴミ回収からトイレ掃除、公園イベントの許可や地域の防災教育などにも積極的に関わっている。また、公園の運営には行政とカフェ事業者に、住民代表、学識者を加えた“官民協働”の組織があたり、オープンから1年以上が経つ現在も園内は清潔に保たれ、今回は養生中で入れなかったが、普段は芝生広場で寝転ぶ人も多い。官民のコラボレーションが生んだ新しい緑地景観の成功例と感じられる。時期は遡るが、8月半ば頃、北柏ふるさと公園を訪ねた。
  炎天下の日だったので、園内の木陰で涼む人の姿がチラホラ見える程度だったが、北柏および柏ふるさと公園と道の駅しょうなんをつなぐ手賀沼ふれあい緑道・手賀沼自転車道の景観は、緑の手入れも行き届き、美しく感じられた。聞けば柏市における『北柏周辺地区都市利便増進協定 5ヶ年計画』の一環で、北柏ふるさと公園内にユニットハウスやトレーラーハウスを用いた食事・購買施設を設置する計画があり、今夏、試験運用が始まったとのことだ。あいにく訪ねた日には遭遇できなかったが、こうした“にぎわいづくり”が、手賀沼の景観を活かす試みであることに期待する。

  翻って我孫子の手賀沼周辺における公園や緑地について考えた。本会が作成した“水八景マップ”からも手賀沼の景観に寄せる関心の高さが窺われる。同時に、手賀沼公園や手賀沼親水広場のことが気になり始めた。そこで「我孫子景観基礎研究 その3」となる今回は、大都市圏を中心に都市公園の運用に様々な新機軸が提案されるなか、手賀沼の景観をかたちづくる公園や緑地の変化の可能性について、いくつか事例を参照しつつ考察してみたい。
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