我孫子の景観を育てる会 景観あびこ_title 第82号 2017.11.18発行
編集・発行人 吉澤淳一
我孫子市つくし野6-3-7
我孫子景観基礎研究 その3
    最新の都市公園事例が変える緑地景観の可能性
                        建築家・工学博士 野口 修(会員)
3-2. 事例2:『隅田公園』の水辺景観
  平成23年3月、「河川空間のオープン化を図り、都市及び地域の再生等に資する」目的で、河川敷地の占用に関する規制が緩和され、河川管理者(国土交通大臣等)の指定を受ければ、事業者等による河川敷地の占用と営業活動が可能になった。
  東京都台東区の『隅田公園』では、この法改正を活用し、平成25年10月、都が取り組む“隅田川ルネサンス”の事業として、公園の河川敷地内に都内初のオープンカフェ、2店舗を開業した。
  堤防上の道沿いに2店舗が並ぶ。水辺からの距離はあるが、建物が雑居する浅草の街並を背に隅田川の開放的な水辺を眺めてのカフェ体験は新鮮だ。
  事例1の『南池袋公園』同様、地元住民を交えた官民連携の協議会を組織し、事業者の選定から運営方針まで、地域の合意形成を図りながら実現された。また、参入を希望する事業者には、“水辺のにぎわいづくり”や“まちを活性化する”アイディアが求められ、隅田公園の2店舗も通常のカフェ事業に加え、ライブや花見イベント、ワークショップの会場等、地域情報の発信拠点として利用されている。
  ところで、こうした河川敷地を活用する試みには周辺の建築物の「顔」を水辺に向けるよう誘導し、河川空間の新しい景観づくりを目指す意図もある。
  東京都が推進する社会実験“かわてらす”事業もその一例で、河川沿いの建築物と防潮堤の間の河川敷地にデッキテラスを架け、ビアガーデンやレストランの屋外席として活用している。こうした事例、一つ一つは単独の事業だが、継続して情報発信することで、人々の興味を水辺に集められる。長い時間を要するが、都市開発で汚染され、堤防や擁壁に囲われて、街並からも「背」を向けられてきた都心の河川空間を再生する試みが進められている。
  水辺景観の活用は、今や地域創生の大きな潮流となりつつある。手賀沼の様な水資源を抱えた我孫子では必須のテーマだろう。その方向性も実に多様だ。
  手賀沼の水辺ににぎわいが戻るには、まだ時間がかかる。しかし、せめて水際のテラスでお茶を飲みながら、地域の将来像に思いを巡らせる場所があれば・・・。
  訪れる度に小さな変化を感じさせる都心の水辺を眺めながら、そんなことを考えた。
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