我孫子の景観を育てる会 景観あびこ_title 第85号 2018.5.19発行
編集・発行人 吉澤淳一
我孫子市つくし野6-3-7
我孫子景観基礎研究 その3  最新の都市公園事例が変える緑地景観の可能性
    最新の都市公園事例が変える緑地景観の可能性
                        建築家・工学博士 野口 修(会員)
3-5.事例5:『カナルカフェ』の水上デッキ
  平日のランチタイム、『新宿中央公園』でキッチンカーを見た。周囲にデザインを揃えたテーブルと椅子が置かれ、昼食を楽しむ人も居る。都心で働く人々が、自然豊かな公園でランチタイムを過ごす“ピクニックランチ”という企画らしい。東京オリンピックの開催まで 1000 日を切ったためか、最近、東京の公園各所で飲食系のイベントが催されている。人気店が参加する日などは、終日行列が絶えないこともあるようだ。我孫子のイベントが気になった。

  ジャパンバードフェスティバルの開催に合せて、『手賀沼公園』にキッチンカーが出店すると聞き、行ってみることにした。本フェスティバルは、例年2日間の会期中に約4万人を集める。秋晴れに恵まれたこともあり、当日は『手賀沼公園』と『手賀沼親水広場』の両会場とも盛況で、会場間をつなぐシャトルバスや水上交通の船も出ていた。

  手賀沼に船を出して水鳥を観察するツアーもあったが、こちらは終日満員とのこと。あらためて鳥に関連した学術、芸術、スポーツ人口の裾野の広さと会場となった手賀沼の希少性を感じた。
  一方、飲食面では、関心を持った『手賀沼公園』が、キッチンカーを 3 台並べただけで、他にテーブルや椅子も無く、公園のベンチに座れないと立ち飲み状態だったり、『手賀沼親水広場』では、テント村にコーヒー販売店は有ったものの、多くの人は土手で飲食しており、雨天だったら一息つける場所を見つけるのに苦労しそうな印象だった。

  おそらくこの規模の集客に対し、飲食できるスペースが足りないのだろう。親水護岸が可能な穏やかな水辺なのだから、もっと水面に近いデッキやカフェスペースなど、工夫の余地があるのではないか?

  そう考えて、飯田橋のお堀にある『カナルカフェ』を訪ねてみた。このカフェは、江戸城の外濠に浮かぶボート場「東京水上倶楽部」を継承し、1990年にレストランを併設する現在の業態にリノベーションされた。手賀沼と似たほとんど流れのない水面にギリギリまで近づけた屋外デッキでの食事は、水景観との一体感を増幅させる。夏には、デッキを舞台、ボートを客席とした水上コンサートも開催されるらしい。手賀沼の水辺にも、こんな可能性がある。
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