川瀬巴水木版画の魅力と本展の特徴
大正昭和期の木版画には、「新版画」と呼ばれる作品群があります。この「新版画」は、江戸時代の浮世絵の制作方法(絵師・彫師・摺師の分業制)を用いて.より芸術性を強く意識した、いわぱ「浮世絵」のルネッサンスです。その風景画の代表作家が川瀬巴水です。

川瀬巴水は明治16年(1883)東京の生まれ。若い頃より絵描きに憧れ、洋画を岡田三郎助に学んだのち、明治43年(1910)には左式に鏑木清方の門下生となり、日本画家となりました。大正7年(1918)、渡辺版画店より塩原の三部作の風景版画を発表。以後40年にわたり、洋画・日本圃・浮世絵それぞれの長所を生かした個性的な600点あまりの木版画作品を制作しました。

欧米人の理想とする日本の風俗・風景を.欧米人に好まれる構図・色合いで制作した為.新版画・特に巴水の作品は関東大震災・大恐慌と国内外の災害にもかかわらず、大いに輸出されました。

巴水の描く風景画は欧米ではたちまち大好評となりましたが、追いつけ追い越せと目が欧米にばかり向いていた同時代の日本では、残念ながら一般的には受け入れられていませんでした。海外ではいち早く1930年、アメリカのトレド美術館「現代日本美術展」に92点が展示され大好評を得、再度1936年にも開催されました。また.欧州でも1933年にポーランドのワルシャワでの国際版画展覧会に多数の作品が出品され、展示即売をしたところ、クリスマスの贈答用に1万枚もの作品が海を渡りました。

海外に大幅に遅れながらも日本国内では、昭和28年に文部省文化財保護委員会からの依頼で、木版画技術の記録作成の為、伊東深水の美人画「髪」と共に川瀬巴水の「増上寺の雪」が制作されました。(本展では両作品が展示されます)これらの作品は文部省に収められ、来日された国賓の方々へ贈呈されたと聞き及んでいます。また、スケッチから原画、版下、版木などは全て東京国立博物館に収蔵されており、常設展などで見ることができます。

川瀬巴水の風景版画は、すでに欧米では葛飾北斎、歌川広重と並び称されており、頭文字から風景版画の3H(Hokusai, Hiroshige & Hasui )とも呼ばれています。一昔前には知る人ぞ知る風景版画の巨匠という扱いでしたが、日本国内でも、ここ10年の間に展覧会が多く開催され、テレビや新聞などに登場する機会も加速度的に増えてきました。

年配の方からは 「そう、昔はこうだった」と懐かしく見え、若い方からは「本当の日本はこうでなくては」と理想的な日本の風景に見えるのでしょう。最近では20歳代・30歳代の若いファンが増えているように感じます。雪・月・花・雨。春・夏・秋・冬。それぞれに繊細な味わいを見せるびしい日本。川瀬巴水の懐かしくも穏やかな作品からは、不安・混迷の時代に人々の心を和ませるパワーが強く感じられます。

昭和5年に制作された「手賀沼」は柏市側から手賀沼対岸の我孫子市側を描いており、通常木版画はスケッチから原版が作られ、200点ほどが摺られます。しかし「手賀沼」は、海外流失や戦火で大半が失われたため、"幻の版画"となっていました。版木も戦火で焼失しており、今回は、そんな貴重な木版画「手賀沼」を制作する基となったスケッチと共に「手賀沼」が制作されてから80周年を迎える今年、新発見されたスケッチを交え、関東にゆかりのある風景版画など、巴木の代表作品を始め関連作品約100余点を一堂に展示いたします。

本展の特徴は、展示内容.木版面摺りの実演、毎日の各種講演会など、この機会にしか出合えない催しが沢山あり、毎日来ても楽しい展覧会です。
「増上寺の雪」
川瀬 巴水 「増上寺の雪」 昭和28年
●イベントスケジュール
3月18日(金) 11:00〜12:30 江戸木版画摺師による木版画摺り実演
13:30〜14:30 「なんでも鑑定団」鑑定士の渡邊章一郎氏(鞄n邊木版美術画舗社長) 講演
15:00〜16:30 江戸木版画摺師による木版画摺り実演
3月19日(土) 11:00〜12:30 江戸木版画摺師による木版画摺り実演
13:30〜14:30 越岡禮子氏(我孫子クリオの会)と鈴木昇氏(川瀬巴水展実行委員長)トークショー
15:00〜16:30 江戸木版画摺師による木版画摺り実演
3月20日(日) 11:00〜12:30 江戸木版画摺師による木版画摺り実演
14:00〜15:30 リンボウ先生林望氏講演と鈴木昇氏(川瀬巴水展実行委員長)トークショー
15:30〜17:00 江戸木版画摺師による木版画摺り実演
3月21日(月) 13:30〜14:30 鈴木昇氏(ギャラリーヌーベル代表)講演
15:00〜16:00 我孫子市美術家協会と鈴木昇氏(川瀬巴水展実行委員長)トークショー
3月22日(火) 13:30〜14:30 「なんでも鑑定団」鑑定士の渡邊章一郎氏(鞄n邊木版美術画舗社長)講演
15:30〜16:30 富樫道廣氏(我孫子の景観を育てる会)講演
3月23日(水) 13:30〜14:30 三谷和夫氏(我孫子の文化を守る会)と鈴木昇氏(川瀬巴水展実行委員長)トークショー
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