逗子からの便り
  我孫子から逗子へ〜私の景観づくり活動     関 基治(造園家・我孫子市景観アドバイザー)
●我孫子市から逗子市に転居して7年目になる。神奈川県に住む娘に近い方が良いと思い、湘南方面に転居を決めたのが最大理由。我孫子市は面積43k�屐た邑�13万人であるが、逗子市は17k�屐�6万人と半分以下の小都市である。樹林・草地・農地を含めた緑地は、我孫子市は47%に対して63%と両都市とも緑の環境に恵まれている。

●我孫子は利根川に沿って農地の風景、手賀沼の周りには二次林の落葉広葉樹林が広がっている穏やかな風景に対し、逗子は相模湾に面した海岸と三浦半島の急峻な山地の常緑広葉樹林に囲まれ、谷戸(やと)沿いに集落が発展した街である。景観としては、どこからでも濃い緑の森が背景に存在するのは素晴らしいことだと感じている。両市とも都心から約1時間のベッドタウンで、同じような住まい方の人々が多いのではないだろうか。逗子は海岸沿いの街で鎌倉のような大勢の観光客が訪れるほどではないが、観光都市として飲食店も多いのは我孫子と違って、住まい方の気分は開放的な環境でもある。

●ボランティアの手がかり
●転居した私は、全くの縁もゆかりもない土地なので、ボランティアや趣味のグループに参加しようと市民センターを訪れ、担当窓口に分厚いボランティアや趣味のサークル活動のPR冊子が置いてあるのに驚かされた。そのひとつとして「ほととぎす隊」(市の花ホトトギス…この地に住んでいた徳富蘆花の不如帰に由来)という街づくりに関係するボランティア団体に入会し、下部組織「いのちの森の会」で活動を始めた。苗木を育てて森づくりを行うというのが会の趣旨で、当方はその方面には若干の専門知識と経験があるのが入会理由ではある。

●会では小学校や公園に、今年亡くなられた、植生学者の宮脇昭氏提唱の森づくりを進めてきた。会の日常活動は、約100年前の立派な邸宅を相続で物納した家屋を公園施設に取り込み、雨戸の開け閉め、庭の手入れなどの維持管理作業を行っている。これも立派な公園管理活動であるが、活動しているメンバーは行政に対しても興味があり、市民側からの発言や他の活動にも参加している方々も多い。町おこしレベルに熱い。会の総会では市長を囲んで、話し合いや「もの申す」的な場ともなり、この小さな都市ならではの行政密着度が高いと感じている。

海岸に近い古い住宅地の景観。元は別荘として利用していたが、現在は交流サロンとして使われている。クロマツに囲まれている。

●街づくりへの参加
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街づくりに関しては、学識経験者と市民で構成されている、まちづくり審議会、景観審議会、みどり審議会などがあり、当方は「街づくり審議会」委員として推薦され参加する機会になった。建築申請などに関して市の条例に適合しているか、また景観的な要望を事業者にお願いもしている。景観的にはデザイン面まで踏み込めない事情もあるが熱心な活動を肌で感じている。現状では大きな開発物件は発生していないが、メイン道路の商店街街路は1階建築壁面を境界線から50�僖札奪肇丱奪�を行うルールがあり、少しでも歩道空間と建物景観の広がりを確保するようにしている。
●逗子には敷地がある程度広い100坪近い良好な戸建て住宅団地が多く存在する。最近その敷地をさらに細分化して販売しているミニ開発が問題となっている。小規模物件は条例逃れになりやすく、団地の建築協定があるにしても、強い拘束力がなく、街並み景観の面から今後の規制をどのようにしていくかは課題でもある。

●同じように、申請時の緑化協定は、図面上に示された緑地が開発時には植えられても、いずれ戸建住宅群に建設された場合には、立派な住宅が建設されても緑がほとんどなくなっているケースも散見され、維持管理の面からであろうが、住まい手側からも街の景観意識を理解する意識改革が必要ではないかと思っている。街づくりは、点の景観がそれぞれの意識により多少長い年月が必要であろうが、線の景観につなげていく必要がある。その地域の街並み景観デザインのようなものを示し、その将来構想に従っていく手だてはないものだろうか。例えば、ある程度同じような種類の樹木を必ず1本植えるなどの街の線のデザインもあるかもしれない。まだ年月の浅い経験ではあるがそんな感想を持っている。

●コミュニティ活動
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逗子市で特徴と思えるのは、町内連合体のような組織で、小学校区単位で区分された「小学校区住民協議会」がある。地域の安全安心な街づくりのために活動している組織体である。ご近所から誘われて理事として参加しているが、会では一昨年からは市のハザードマップをさらに詳細に地域歩きをしてその土地特有のハザードマップを作成して配布空き家問題、ブロック塀などの課題にも取り組んでいる。昔から住んでいる旧住民と他所から移り住んできた新住民との若干の意識格差があるにはあると感じている。

●逗子に移り、市民参加型街づくり活動の活発な都市の印象を持っているが、一方で、ボランティア団体や町内会組織は当初から参加した方々が高齢化し、活動人数が徐々に少なくなっている問題もある。継続的に若い人たちの参加が望まれるところである。

●「住めば都」と云われる。我孫子の広い道路や近くにある大きなスーパーやホームセンターが便利である。一方で、狭い道路や坂道の多い逗子、しかし濃い自然樹林に囲まれた景観は気分が良い。

●「住んでみるとどこでも都」その土地の良さは住んでみるとどこでも住み心地の良い面、楽しさを多く発見する。私の住まいの小さなマンションではあるが、道路沿いの当初は単純な植込みを季節ごとに花々を咲かせる「ストリートガーデン」に変え、12月には「まちなみデザイン逗子賞」を受賞することになった。

●今後も健康でいる限り、街づくりと市民活動に取り組んでいきたい。


山側の逗子の典型的な戸建て住宅群。坂道が多いが、背景には常緑広葉樹の森の存在がある。

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