シリーズ 「まちの美化に取り組む人々」 - 49 -
       パン屋さんのシャッターアート   吉澤 淳一(会員)
我孫子駅南口近くの人気の高いパン屋さん「ブンカドー」のシャッターアートが素晴らしい。時々買いに行くが、その時はシャッターが開いているので気が付かなかった。数年前から定休日の日曜日(月曜も)の午後このお店の前を通ることが多くなり、そのたびにシャッターの絵に見とれていた。

花に囲まれた店先に少女がフランスパンを抱えていて、それを白い子犬が見上げている。後ろには白いコック帽の職人さんの笑顔が。2つの出窓を通して店内の様子まで描かれていて、すぐにでも入っていきたくなるような、童話の1ページのような雰囲気が醸し出されている。
会員の三上真弓さんが、奥様の秋山さんと知り合いであることを知って、インタビューしてもらった。

【秋山夫人談】
(記憶は曖昧ですが)10年ほど前の事、お店の改装中に主人と店先にいたら、車で通りかかった見知らぬ芸術家風の男性が「シャッターに絵を描きませんか」と話しかけてきました。シャッターアートを手掛けている方と分かり、主人と相談してその場でお願いすることにしました。3〜4日かけて出来上がった絵は、お店の雰囲気にマッチした素晴らしいものでした。男性はボランティアのようなものでしてと謙遜され、十分ではないと思いつつ謝礼をお支払いした記憶があります。その時いただいた名刺をなくしてしまったが、後になって名のある方であろうとは思っていました。

さて作者であるが、三上さんが絵の左下にある「2012・9・12 Kiyota」の文字を見つけて、清田定男さんというシャッターアート界の第一人者であることを突き止めた。清田さんは既に他界されていたが、彼の作品集(ネット)の中にこの絵が収録されていた。

本シリーズでは、まちを彩る草花やまちの清掃を取り上げてきたが、今回ブンカドーさんのシャッターアートにスポットを当ててみたら、前述のような意外な事実が浮かび上がってきたのである。
清田さんが何故我孫子に来たのか、何故ここを通ったのか、何故このシャッターに描く気になったのか、残念ながら今ではご本人に訊くことはできない。しかし、彼の貴重な作品が我孫子にも遺されていたことに驚いた。

※清田定男さんについて
 生誕:昭和14(1939)年2月28日、平成29(2017)年2月 没(享年78)
全国の商店街のシャッターに、エアブラシやスプレーで絵を描いてきた。味気ない無地のシャッターや街並みを絵で彩り、店の宣伝や地域活性化、街の美化に役立てている。約30年で3000点以上を制作してきた。平成の山下清という人もいる。




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