我孫子の景観を育てる会 | ![]() |
第121号 2024.5.18発行 発行人 中塚和枝 我孫子市緑2-1-8 Tel 04-7182-7272 編集人 大久保慎吾 |
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今なお活動中の火山、氷河、地熱温泉が多いため「火と氷の島」と言われ、北極圏に接する世界最北の小さな島国とは?
それはアイスランド。バイキングの子孫が造った国の歴史は、9世紀後半に遡る。時のノルウェー国王との政争に敗れた貴族たちの家族らが独裁から逃れるため、北緯63度〜66度付近に位置するこの島に移住したのが始まり。人口約39万人の小国だが、今から1100年近く前の930年に「アルシング」と言う世界最古の民主議会を誕生させたのは特筆すべきであろう。 そんなアイスランドを訪れた動機は、光の美のシンフォニーを奏でるオーロラを初めて観賞したいとの想い。それは1996年2月の寒い冬で、成田からコペンハーゲン経由で首都レイキャヴィークに着いた。2度目の訪問は夏の白夜を楽しんだ2003年8月。ノルウェーやデンマークを旅した後、グリーンランドに入る前に同国に立ち寄ったもの。
国土面積が日本の本州の半分にも満たないが、200以上の活火山と氷河を擁する雄大な感じの島だ。首都として世界最北の北緯64度に位置するレイキャヴィークは、島南西部のレイキャネース半島の付け根に位置する。18世紀後半から発展した新しい街だが、人口12万人は国の総人口の1/3を占める。「煙たなびく湾」を意味する首都名の由来は、最初の島上陸者が周辺の温泉から上がる湯煙を見て名付けたと言われる。どの建物も地熱温泉から引いたお湯で温水や暖房を賄っているため、燃料を燃やす煙突が無いためどこも清潔。こじんまりとした美しい港町は、文化や芸術活動が盛ん。
ファクサ湾に臨む街並みを一望するなら、市街地の南外れの小高い丘の上に建つペルトランがイチ押し。宇宙ステーションのようなガラスドーム状の建物は、レイキャヴィーク全体に生活に不可欠な温水を供給する熱湯貯蔵ステーションになっている。1940年に設置された最初のタンクは取り壊され、1991年に改築されて現在のようなUFOに似たユニークなデザインになった。1階は蝋人形などを展示するサガ博物館、4階は展望デッキ、最上部は回転式レストランになっている。特に見どころは展望デッキで、雪景色の市内のほかに近郊の山々や海を見渡すことができる。雪の無い夏になると、オモチャ箱をひっくり返したかのようなカラフルな建物が並ぶのが見える。
ペルトランから眺めてひときわ目立つのが、旧市街の高台に建つ高さ約75mのハットルグリムス教会。レイキャヴィークのランドマークになっているアイスランド最大の白亜の教会は1945年に着工され、打上げロケットのような奇抜なデザインの建物が完成したのは約40年後の1986年。その内部はルター派らしくシンプルだが、ドイツ人のオルガン職人が作った巨大なパイプオルガンが立派。エレベーターで昇った展望台からは高層ビルが皆無なので、整然とした街並みのパノラマを眺めることができる。
旧市街のほぼ中心にあるチョルトニン湖は市民憩いの場で、湖畔には市庁舎、国会議事堂、国立美術館や博物館などがある。特に湖の北端の畔近くに建つ国会議事堂は、世界で最も長く続いている議会アルシング。夏は多数のカモや白鳥など水鳥を湖上で見かけるが、寒い冬はスケートリンクのように凍結して白銀の世界が広がる。南端の小さな公園にはたくさんのユニークな彫刻が並んでいる。 この議事堂の東隣にある質素なドゥムキルキャン教会は、1796年に建立されたレイキャヴィーク最古の教会。レイキャヴィーク大聖堂とも呼ばれ、シンプルな建物はルター派の信仰の教義を現している。アイスランド国会の開会の際には、ここでミサが行われ議場へと移る。
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街の北東部にある海沿いのホヴジ・ハウスは小さな建物だが、優雅そのものの佇まい。1909年にフランス人医師宅として建てられ、後にフランス領事館になった。その後は迎賓館になり、1986年10月アメリカのレーガン大統領とソ連のゴルバチョフ書記長の歴史的な会談が行われ、東西冷戦終結のきっかけとなり一躍有名になった。 当時、ソ連は鉄のカーテンを引き、アメリカは戦略空軍爆撃機と原子力潜水艦で共産圏を包囲して一触即発の状況であった。ソ連とアメリカの中間に位置していた小国アイスランドが両首脳会談の仲介をとり、両大統領と対等に面談したという。
ホヴジ・ハウスから西へ進むと、ファクサ湾を背にして一際目を引くモニュメントがある。サン・ボイジャーと言い、海に繰り出す人をイメージしている。彫刻家ヨン・グンナルのデザインで、アドベンチャーの魅力、発見の楽しみの大切さや夢など表現しているとの由。市誕生200周年を記念して作られたこのドリームボートの彫刻は「太陽への賛歌」とも呼ばれ、彫刻が多いのが目立つ街中でも最も有名な作品だ。
レイキャヴィーク観光の魅力は、むしろ郊外であろう。その代表は、約50km南西郊外にあるブルーラグーン。ケプラヴィーク国際空港近くにあるアイスランド版露天風呂は、世界最大の屋外温泉施設だ。広大な溶岩台地にスヴァルツェンギ地熱発電所が建設され、その発電に使われた温水が溜まって池となり、温泉施設として整備された。湯気がもうもうと立ち込める面積約5,000m?の池は開放感が溢れ、まるで湖のように広大。
水源は地下2,000mから汲み出す熱水。微細な粒になった二酸化珪素が太陽の光のうち青い色だけ散乱させるため、ミネラルを豊富に含んだお湯の色は青白く見える。温泉の温度は約40℃と快適だが、世界一大きい露天風呂だけに場所によって温度にかなりのムラがある。治療目的で入浴する人が多く、湿疹などの皮膚病に効用があるほか、温泉の底に沈殿した白い泥は美容効果があるとか。因みに日本の温泉と違うのは、男女混浴のため入浴者全員が水着を着用する。地元のアイスランド人たちと一杯やりながら話し込み、裸の付き合いをしていると日本の温泉にいるような気分になった。 ブルーラグーンではアイスランド旅行の主目的、オーロラ観賞も堪能した。レイキャヴィーク到着後の深夜、3日間続けて待機したがオーロラは現れなかった。明日は日本へ帰国する最後の夜が、オーロラ観賞のラストチャンスになった。底冷えする中を待機するもなかなか現れず、夜半を過ぎてしまった。もうダメかと半ば諦めていた頃、やっと待望のオーロラが観察できた。肉眼で見るオーロラは思ったほど鮮明ではなかったが、一応幻想的なオーロラにもお目にかかれたのは幸運だった。
ほかに郊外観光の見どころとしては、東郊外に点在するゴールデンサークルと呼ばれる人気の観光ルート。熱湯が噴火するかのように噴き上げる間欠泉、氷の芸術作品とも言うべき凍結したグトルフォスの滝、地球の割れ目ギャウなど。 ![]() |
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