写真3:フレディ・マーキュリーの銅像とレマン湖畔の景観
朝早い時間だったので、銅像前で写真を撮れたが、スタジオで見学を終えた際には行列ができていた
写真4:スタジオ・エクスペリエンスの展示と内部の様子

  そういえば、イギリス出身のハードロック・バンド、ディープ・パープルの代表曲「スモーク・オン・ザ・ウォーター」(1972)は、スタジオ・エクスペリエンスが入っているカジノの前身が火事になった状況を描写した曲で、レマン湖上に漂う煙と燃え上がる炎を表現した歌詞が曲のサビになっている。何とも話のネタは尽きないが、前述した通り水辺にも近く、育った樹木が木陰を作る様子がなんとも涼やかで、夏場でも気持ちの良い場所だった。

  湖畔と銅像は、よく聞く取り合わせだ。レマン湖のフレディ像のように、その場所ゆかりの人物を題材とする例もあれば、日本における東北・田沢湖に建つ金色の女性像「たつこ像」のように伝説を題材にした例もある。また、十和田湖の乙女像は製作者である彫刻家、高村光太郎の傑作として知られた例だ。

  水辺の銅像は身近な手賀沼湖畔にもあって、水の館前の河童像や、最近では三樹荘の向かいに建てられた嘉納治五郎の銅像が記憶に新しい。筆者としては当会の設立メンバーであった冨樫さんが、手賀沼・久寺家線が新設される際、八坂神社から手賀沼公園に下る公園坂通りとの合流部分に小さな三角形のスペースができることを指摘して、「ここに白樺派の3人衆(武者小路実篤・志賀直哉・柳宗悦)の銅像を建てるべきだ」とおっしゃられ、妙案だなと思った記憶がある。

6-2.スイスの観光デザイン
今回、スイスを観光して、名峰と呼ばれる山の頂上ギリギリまでロープウェイや山岳鉄道が整備されていることに驚かされた。まさに富士山の9号目付近までロープウェイが整備されているような感覚で、歩いて登るのが難しい子どもや高齢者、車椅子の方でも"平等"に麓の街から雪渓や氷河が残る高度まで運んでくれる。
  現実の富士山でこうした整備が為されない背景としては、活火山であることに加え、西洋との自然観の違いが感じられる
写真5:スイス山岳観光のロープウェイや発着所の施設
写真6:マッターホルンの昼景とモルゲンロート(朝焼け)
写真7:クライネシャイデックから見たユングフラウと展望施設内の氷河トンネル

  ここでの自然観の違いとは一神教であるが故に、神が創った自然を「制御」することが人類進化の道と捉えた西洋の思想に対し、多神教の東洋では全ての自然物や事象に神の存在を信じて敬い、そのままの自然と「調和」する道が選ばれている点ではないか?

  そう考えると、今回の旅で観た山岳鉄道やロープウェイ、断崖に建設された施設群などは、自然を「制御」する装置として、危険な工事だったと思われる場所にも建設され、麓と変わらない環境で滞在できる設備が備わっている点にも納得がゆく。

  つまり、「制御」され、デザインされた非日常的な景観を楽しむ思想が、スイスにおける「山岳観光」の根底にあるのだろうと思った。
                              (続く)



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