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-その10- 今野 澄玲(我孫子市教育委員会 文化・スポーツ課) |
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| 1.はじめに ●本来ならば、前回の続編といきたいのですが、今回告知 ねじ込ませていただきました。今回のテーマは「英国人が見たる日本」これは、杉村楚人冠が1907年5月7日“Daily mail”に寄稿した「日本人が見たる英國」(写真下)をもじったものです。それではこの「英国人」は誰なのか、ご紹介しましょう。 ![]() 2.ラフカディオ・ハーン/小泉八雲(1850-1904) ●いま、NHK朝の連続テレビ小説で放送されている「ばけばけ」は、小泉八雲の妻セツがモデルとなっている物語です。小泉八雲について、簡単にご紹介すると、1850年ギリシャ西部イオニア海に浮かぶフカダ島で生まれたイギリス人です。アメリカに渡ったのち、新聞記者になり、1890年出版社の通信員として日本を訪れた後、島根県松江や熊本の五高で英語教師として教鞭を執ります。その後、東京に移ると1896年〜1903年には東京帝国大学(現東京大学)で英文学の講座を担当、1904年には早稲田大学で講師を務めます。 この略歴だけでも我孫子との縁を見出すことができます。例えば、小泉八雲が新聞記者であったことは記者であった楚人冠に通じますし、熊本の五高といえば、八雲が講師だった時の校長は嘉納治五郎であり、嘉納治五郎が校長時代に在学していたのが旧村川別荘を建てた村川堅固です。 3.小泉八雲と楚人冠 ●小泉八雲が見た日本の第一印象は『新編 日本の面影』から窺えます。本の最初に書かれた「東洋の第一日目」では、初めて触れる日本の景色・文化・人々の様子を鮮明にとらえています。1894年に書かれたこの本の序には八雲の国固有の文化に触れる際の考えが書かれています。「どこの国でもそうであるように、その国の美徳を代表している庶民の中にこそ、その魅力は存在するのである」。この一文を読んだとき、私は楚人冠が企画した世界一周会の趣旨を思い出しました。世界一周会は朝日新聞社が1908年に日本で初めて民間向けに売り出された海外パッケージ旅行といわれており、楚人冠も随行しました。政府の要職など限られた人しか海外に行く機会がなかった時代、「この旅行団の目的は、日本人に世界を見せることであり、異なる国民間の理解を図るためには、実際に会ってみなければならない。もはや国の代表を外交官に任せる時代は過ぎた」と述べています。現地に赴き、人と人が対面することでこそ、異文化の交流ができると双方伝えているのがわかります。これは、実際に現地に赴き「人を見る」そして、発信することを信条とした新聞記者ならではの考えなのではないでしょうか。楚人冠の蔵書には『Kwaidan(怪談)』の原書が所蔵されており、楚人冠も八雲の本を読んでいたことがわかります。 |
4.英国人が憧れる日本 ●この八雲が書いた本を愛読し、日本に憧れて日本にやってきたのはバーナード・リーチ(1887-1979)です。バーナード・リーチは香港に生まれたイギリス人陶芸家です。1909年に日本に来たリーチは上野桜木町でエッチング教室を開いたことがきっかけで、白樺派の文人たちと交流することになります。リーチが訪日したときには八雲は亡くなっていますので、二人の交流はありませんが、時を超え、場所を超え「本」で情報を共有していました。先述の『新編 日本の面影』には「(前略)どんな火事であろうと芸術にとっては悲劇である。さまざまなものが無限に手作りされてきた国だからこそ、それはなおさらのことだ。(中略)工匠や職人が作ったものは、他人の作品とは違っており、たとえそれが、自分の作品であっても、ひとつひとつ異なっている。(中略)この火災の多い国では、芸術への衝動自体が、代々の芸術家を越えて生き残る生命力を秘めており、それゆえ、かつての名匠の労作を灰燼と帰し、ぶざまに解してしまう炎にも、敢然と立ち向かってきた」とあります。こう記した八雲の文を読んでいたリーチは日本文化を理解していたのではないでしょうか。この理解は、のちに民藝(民衆的工芸)を提唱した柳宗悦との交流にもつながるのかと思います。 5.おわりに ●彼らが生きた時代は現代のように移動することは困難でした。写真が少ないなか、いかに魅力的な場所であるかを文字で表現しています。このことから、現代の私たちは文章で失われた風景を再構築できるのではないでしょうか。そして彼らは続けて「百聞は一見に如かず」、できるのであれば実際に体験してこそ実を得られると伝えています。今回最後にもう一つ八雲の文章をご紹介します。八雲は「異国からの訪問者からすれば、少なくとも東洋の第一日目はどうしても古いものが新鮮に映り、やたらと目を奪われる」と言っています。そうすると、私たちが情報発信した文字次第で、我孫子の魅力を得た異国(市外)から来た訪問者にとって、我孫子遺産が新鮮に映るのではないでしょうか。 6.おまけ ●2月7日(土)に旧井上家住宅で朗読イベント「古民家×Kwaidan(怪談)×民具」を行います。怪談の舞台となる昔の家で古い道具などの解説をはさんで、小泉八雲の『怪談』を読む会です。歌舞伎で使われる下座音楽(黒御簾音楽)を効果音として使いながら、身も心も寒くなるイベントになる予定です。防寒対策をして、ぜひご参加ください。
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