インタビュー、「景観を守る人々」・・・(株)日立総合経営研修所・関島康雄社長
2003年11月6日(木)10:00am      場所:HlMD社長応接室
出席者:HlMD、関島社長、小滝氏 当方:富樫、清水
関島社長には大変ご多忙の中、会議中を中座してのインタビューだった。

⇒これまで2回、今月はまた庭園を市民に公開していただくわけですが、この広大なお庭を維持、管理されている意気込みをお伺いしたいのですが。

私たちは、常に考えるため、勉強するための環境整備を心がけております。
戦略を策定する、あるいはビジネスモデルを構築するためにはどのような人聞が必要なのか、それをどう育てるのかを考えます。そんな作業は日常生活のザワザワしたところでは、なかなか出来ることではありません。普段とは違った場所が必要で、日常からの飛躍が望まれます。それにはいい自然の環境が,最も適しているのです。

⇒そんな話を何時か、数学者の広中平祐に聞いたことがありました。in putは鳥のさえずりの聞こえるような静かなところで、反対に、out putは弾丸の飛んでくる戦場とか・・・

いい場所で学んで、戦場で得たものをまた持ち帰ってくる。いいものは只ではありません。必要なものには金を払わなければなりません。勉強するには授業料が要ります。しかしその価使を認めなければ払わないでしょう。認める人が多いからこの環境が維持できるのです.美しい景観を、一人だけで守るのは難しいことです。良い環境で勉強し、それが良い考えを生み、結果として日立のためにとやっていることが、世界のお客さまに対して、親切で、いいものが提供できるようになるのだと思います。

⇒そのような社長のお考えは、日立さんの伝統的なものなのですかねー

「日立を創った男」という本の中に、日立の学校の話があります。その中で、日立では、教育の責任者は常に社長ということになっています。普通、企業の教育責任者といえば、たいてい人事担当の常務取締役でしょう。日立では。Chief Education Officerというのは社長に決められている。歴史的にそうなっていて、明治の頃、日立をつくると同時に工員を養成するための徒弟養成所(現日立工業専修学校)というのをつくった。3年間働きながら勉強したのです。1学年が200人、多いときには300人位選ばれて入学しました。現在は、3年間奨学金をもらいながら高校生として勉強しています。

⇒景観の話になりますが、手賞沼の眺望があるのも良いデスネー。

広々とした景色が必要です。浩然(コウゼン)の気を養うためには多くの借景が必要です。ここだけが一人で生き残っても無駄なことです。景観は広い範囲でバランスがとれていなければ価値がない。
関島康雄社長
⇒我孫子はかつて文人たちが、その景観を慕って集まったが、やがて去ってしまった経緯があります。

ここもだんだん古くなってしまいました。研修の内容も変わってきています。ただ頭脳だけではなく、アスレチックの設備、プール、散歩のプログラムなども拡充したいのです。建物を建て替えるにしてもここでは高さの制限もある。この環境を雑持しながらそれをやっていかなければならない。

⇒これだけの自然庭園を維持されるのに一番のご苦労は…
良い植木屋さんがいることです。職人さんです。でも何時までもというわけにもいかない。この問も、80歳になってやめられた人もいます。この庭をよく知っている人。ここの木や草と話の出来る人が必要です。とくに重点にしているところはありませんが、竹林の手入れなどは、大変重要で、ここを知っている人と、知らない人とでは見積もりの値段もとんでもないものになる。

⇒良い自然環境を雑持・管理されるご苦労をお伺いできて有難うございました。今後も我孫子の市民が共有できる空間であることをお願いしたいと思います。
お忙しい中をありがとうございました。

<<インタビューを終って>>
我孫子の斜面林が破壊されていく中で、一際目立つ高野山の日立総合経営研修所、緑の色も際立っている。一般公開に応じていただいて今月で3回目を迎える。庭園や、公園という概念に私たちはトンと疎い。関島社長のインタビューの中で、いかに人間教育に自然の環境が重要な位置づけであることを思い知らされた。
すれば我孫子は、研究、学ぶには,最適の環境であるといえるのかも知れない。嘉納治五部が7年制高等学校を創ろうとしたことも納得がいく。
それに、環境は一人で守っても意味がないといわれてグサリと胸を突かれる思いがした。「浩然の気を養うためには多くの借景がいります」とは景観を考えるものにとって、基本的な警句であろう。
空間は誰のものでもない。皆のものである。公開を通じて、市民全員で、このような概念を普及させたいと思ったところである。
(富樫道広・記)

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