インタビュー、「景観を守る人々」・・・ 「あおむし君のおうち」菅野みどりさん
日時 2004年2月9日(月)  2:30pm
場所 菅野みどりさん宅         出席者 菅野みどりさん、聞き手  富樫、高橋、清水
第6回(2002年)景観奨励賞を受賞された 「世界で一番小さな蝶ちょ園―あおむし君のおうち」に菅野みどりさんをお訪ねした。お宅は、緑多い寿一丁目の子之神大黒天の近くにある。

⇒蝶ちょとのかかわりあいはいつ頃からですか。
 私は、埼玉県の見沼で育ちました。見沼は、首都圏に残る最大の自然空間と言われています.蝶ちょは、小さいころから大好きでした。蝶ちょというより、 あおむし、いもむしが好きだったのです。蝶ちょは飛ぶことができますが、あおむしは、じっとしていて、ほかの昆虫のエサになってしまう。 一番弱い。それで何となく守ってやろうと言う気持ちですね。それで28年たってしまいました。今まで育てた卵は25種類、我孫子には50種類くらいいると聞いています。

⇒蝶ちょがここに集まってくる源泉は何でしょう。
 それはエサがあるからです。蝶ちょが好きな蜜原の花、それと食草(あおむしの食べるエサ)、蝶ちょの種類によって違いますが、 それをセットにして植えておくと必ずきてくれます。
⇒卵から幼虫、さなぎそして蝶になる期間はどのくらいですか。
 モンシロ、アゲハの場合、卵を生んでから大体1週間くらいで幼虫になります。幼虫は5回の脱皮のあとさなぎになります。
 幼虫時代は20日くらい。さなぎは季節や温度によって違いますが10日くらい。真夏などは5日で蝶になるときもあります。 さなぎは、秋から春にかけて約4ヶ月越冬します。蝶のままで、また幼虫のままで越冬する種類もいます。

⇒出窓で蝶ちょを飼われる意図は何ですか。お宅のつくりもユニークですね。
 蝶ちょ園をつくってみたい、という夢があって、あちこち見て廻りました。多摩動物園や、南房パラダイスの昆虫館にもいってきました。 が、温室で飼育されていて、冬でも蝶ちょが飛んでいたりして、これは自然じゃないなと思い始めました。そこで通りすがりに、 蝶ちょのあるがままの生態が見られる場所、あまり虫に関心の無い人も、ちょと覗ける場所ということで、お店のショーウインドならぬチョウウィンドとなりました。 高さも子供の目線で出窓を設計しました。
 家は、角地で逆三角形の土地の上に、蝶ちょが飛んできやすい、住みやすいようにいろいろ考えて建てました。木造ですが外壁は天然石を使いました。 自然の素材は虫たちも好きなようです。出窓の道路を隔てたA邸の広い庭園の中央に咲くつつじの花の蜜が、蝶ちょの大好物なんです。近所の子供たちと一緒に羽化した蝶を出窓から放つとそこに喜んで飛んでいきます。 私の家の廻りにも食草や蜜原の花を植え、蝶ちょが憩えるように、また低い柵に蔦をはわせさなぎが住めるようにしてあります。
●菅野みどりさん宅(寿1丁目)


⇒これから"あおむし君のおうち"をどう守っていかれますか。
 "おうち"を景観賞に推薦したのは近くの小学生6年生の子です。長い間見に来てくれています。このような家に建替えたのは6年前。 それ以前は近くの保育園に、籠にさなぎを入れて持って行ったりしました。小学校にも子供たちが、蝶になるところをいつでも見られるようにと 保健室と職員室の間の廊下の隅に置いてもらっています。
 最近、子供たちのなかには、幼虫の糞が湿って水分が多くなったのをみて、さなぎになるのが近いぞ、とわかる子がでてきたり、あまり関心のないように見受けられた子が、 面白がって覗きにきたりしています。また農家の方が、「こんな幼虫がいたよ」と持ってきてくれるようになりました。それをみて私自身学ぶことも多いんです。
 これからも、ひとりでやっていける最高の事をしていきたい。そして春から秋にかけ我孫子の自然や庭園に、花から花へと舞う美しい蝶ちょが沢山見られるようになれば、 素晴らしいな、と想っています。
⇒長時間どうも有難うございました。(高橋正美)

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