第12号 2004.9.30発行
【八景探し】  吉澤淳一(会員)

我孫子のまちで、新しい八景探しを試みようと思う。それはまちの中のいろいろな題材毎に、八つずつ景を選んでいこうというものである。坂道八景、ハケの道八景、車窓八景、石碑八景、まちなみ八景というふうに「いろいろ八景」を探してみようというものである。そこで八景についてにわか勉強をしてみた。

八景のおこりは、中国湖南省洞庭湖の辺り、瀟湘(しょうしょう)にあり、文人画家宋迪(そうてき)が画題として選んだといわれる。日本ではこの瀟湘八景にならって、足利末期に近江八景が生まれ、江戸元禄期には安藤広重の浮世絵で知られる金沢八景が誕生した。これらを真似て江戸期から現代までに、各地に八景が誕生し、今ではその数は百を下らないという。

このようなわが国のいろいろな八景と、本家の瀟湘八景を比較してみると、面白いことに気づく。それは、本家の八景は地域を洞庭湖の南にとりながら、特定の場所の固有名詞は使わずに、「山市」「漁村」といった普通名詞を使っていることである。例えば「山市晴嵐」は近江八景では「粟津晴嵐」となり、「漁村夕照」は「勢田の夕照」となるように。本家の八景はそもそもが画題であり、こちらのそれは名所旧跡選びや観光宣伝のためであったことの違いかと思われる。

この地でも、かの瀟湘八景になぞらえて、明治から大正にかけて布佐八景、手賀沼八勝、手賀沼八景が生まれ、最近では地元住民によって選ばれた21世紀手賀沼八景がある。

古典的な八景では、場所と情景とが組み合わされているのが特徴である。手賀沼八景に見ると、「布瀬落雁」「子の神秋月」というように。これが最近では単に場所を示すものに変わってきている。21世紀手賀沼八景では「滝下広場」「大津川河口付近」のように変わってきている。野田八景も「御用蔵」「清水公園」等となっている。景観の観点からはこの方がわかりやすい。

さて、「いろいろ八景」に話を戻そう。我孫子の景観は、自然の風景、里の風物、まちなみ景観の三位一体で成り立っている。この景観を再発見する手立てとして、題材ごとにみんなで自分の好きな景観を探してみたらどうだろうか。「学校八景」や「ガーデニング八景」だってあるかもしれない。「畑八景」も畑の美化につながりそうだ。このように八景探しもさることながら、題材そのものを見つける楽しみもあるだろう。市民みんなで、題材を決めて八景探しに出掛けてみよう。

今仲間たちとそんな構想を立てている。我孫子の新名物になったら面白い。

■もどる