景観法が切り開くか? 景観づくりに関する市民活動の可能性
今川 俊一(会員)
景観法については、既にいろいろな所で紹介されています。最も中心に紹介されているのは、各自治体が景観づくりの計画を建て、それに基づき建築物などの高さや色・デザインの基準を設けて制限できる(「景観計画区域内における制限」や「景観地区」など)という部分です。

しかし、こうした内容自体は、我孫子市でも景観条例で平成9年から取り組まれてきた部分であり、これまでの延長線上でしかないとも言えます。「条例」→「法律」と格上げされたことは確かによいことですが、実は、ほぼ同様のことが可能な制度がありながらこれまで充分生かされてこなかったという経緯もあるのです(都市計画法の地区計画制度、我孫子市景観条例の景観形成推進地区など)。ですから、こうした「地域ごとのルールづくり」については、これを契機に、これまで都市計画の仕組み自体を充分生かせなかった原因・反省も踏まえてさらに積極的に取り組むことが重要だと思います。

景観法について、個人的に期待している制度は、実は他の部分にあります。それらは、私たち市民が身近にかつ主体的に活用していくことができるかもしれない以下の制度です。

☆景観協定(第81条) …建物だけではなく、道路や公共空間の利用についてもルールを

景観協定では、これまでの建築協定や緑化協定が持っていた建築意匠や緑の保全の視点に加えて、景観に関する新たなルールの可能性を示しています。例えば、商店街で道路上に看板を置いたり、路上カフェなどをする場合のルールなど「利用する上でのルール」も良好な景観づくりにとって重要だという考え方を示しています。

今後、地域ごとにユニークなルールを考えていくきっかけとなるのではないでしょうか。
☆景観重要建造物(第19条) …文化財と似て非なるもの?
この制度のポイントは二つあります。一つは、文化財とは違う視点でより多くの建物が対象となること。古さ、新しさに関係なく景観上大事なものを指定でき、また、建物と一体をなしている敷地等を含めて指定できるとされています。

二つ目は、相続税、譲渡関連税について優遇措置が与えられることです。税金問題は、歴史的な建造物や緑地を守ろうとするときに大きな壁となっていた課題です。景観法の優遇措置が実際どれほどの効果を持つかは未知ですが、「地域が「守りたい」と意思表明した景観資源は通常の不動産とは異なる」という考え方が切り開かれるという意義は、経済や不動産全体にとっても大きいことだと思います。

我孫子においても斜面林や歴史的建物の保全に活用可能な制度だと思います。

☆景観整備機構(第92条) …景観づくりの新たな担い手になりうるか
景観形成の新たな担い手として「景観整備機構」が創設されました。これは、財団やNPO法人等がなるものと想定されており、その業務は、景観形成の技術的支援、景観重要建造物・樹木・農地等の管理、景観形成に関連する事業・土地の管理、景観形成に関する調査研究などです。

調査・助言を中心とするもの、特定の景観資源を管理することを専門とするものなど、いろいろな団体が考えられますが、いずれにせよ、景観づくりの新たな担い手として、NPOなど、成熟した市民組織が活躍することが期待されているわけです。「我孫子の景観を育てる」組織として、今後どんなことをすべきか、考えさせられる条文ではないでしょうか。
(※景観法の全体像、各条項の詳細については各種機関から出されているパンフレット、
解説(http://www.mlit.go.jp/keikan/keikan_portal.htmlなど)を参照してください。)

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