シリーズ まちの美化に取り組む人々(その8)                                          鈴木 茂夫(会員)
千葉日産 我孫子店
顧客の来店を待つ自動車販売店は、たくさんの人の目にふれることを期待して幹線道路沿いで営業している。展示スペースや商談コーナーなど外から見える室内は、どの店もきれいに飾られている。一方、外部に対しても特別に気を遣っている店舗は少ないようだ。

建物の外観はもとより、道路に面した空間の様子は、近隣住民にとって地域の景観を構成する大切な要素でもある。水やりやたまの刈り込み程度の手入れで済む植え込みを沿道に設けた店はよく見かけるが、本格的な花壇を作って花を絶やさない店舗は少ないと思う。

県内に54店舗の拠点をもつ有数のディーラーである千葉日産自動車株式会社。国道256号線と県道8号線(船橋我孫子線)の交差点近くにある我孫子店の、国道に沿った長い花壇はいつもきれいな草花が咲いている。尋ねてみると、これは同社が行っている地域社会への貢献の一環として、同店の皆さんが工夫をして力を入れている美化活動とのこと。

店長の林 孝久さんは「会社の方針で、毎月一回全社各店がクリーンデーを設けて、それぞれの店舗周辺で環境美化活動を実施しています。この店では活動のひとつとして、従業員全員で花壇の日常管理も行っています。ここの花壇は幹線道路に面していますが、ごみやたばこの吸殻などの投げ捨てはほとんどありません」と胸を張っておられた。
試みに、同社のホームページから我孫子店を検索してみた。『国道356号線に面しており、花壇が自慢のお店です。道路沿いに長く大きな花壇があり四季おりおりのお花を植えております』とアピールしている。全社をあげての地域社会への貢献活動が確かな形になっていると感じた。

手賀沼ふれあいラインに面した姉妹店の我孫子若松店にも道路に沿った花壇がある。草花をアクセントにしたレイアウトで、ここも手入れが行き届いている。同社が全社的な取り組みとして地域の環境美化に力を入れていることが理解できた。
「日本の景観とまちづくりを考える全国大会」に参加して                           伊藤紀久子(会員)
6月1日、ニッショーホール(虎ノ門)で行われた標記のシンポジウムに参加した。6月1日は景観の日であり、当日のメインテーマは「美しく風格のある国づくり」であった。

受付で配布される資料の多さ、立派さ、大勢の関係者、ステージの重々しさから考えて国の意気込みを感じた。

プログラムは、金子国土交通大臣の挨拶から始まった。続いてまちづくり功労者大臣表彰(42ケースの中に千葉市が2ケースあり)、美しいまちなみ賞(栃木市など10ヶ所の中に浦安市があり)等の表彰式が行われた。

特別講演は、青木文化庁長官の「都市の景観と文化環境」であった。

文化人類学者の長官は、「我国は都市を形成する時、景観を無視して来たのではないか。ヨーロッパの歴史ある町は実に景観を考えている。また大切なことは、まちを歩いて快適であることだ。パリの場合、小憎らしい程上手に出来ている。ドレスデンの戦後復興も素晴しい。歴史・伝統の思考を深めるまちづくりが大切である」と話された。
続いてパネルディスカッションが行われた。パネリストは、文化庁長官、池邊このみニッセイ上席主任研究員、門川大作京都市長であった。ここで京都市長の主張を特記したい。

「京都は1200年前、平安京として遷都された。以来、平和で安全な都を目指して今日に至っている。京都の子供達に、京都の文化の特徴は?と聞くと、小さく畳んで大きく使うと答えた。確かに、扇・着物・蒲団・簾・山車等、数々ある。景観の字を分解すると、京の日を観るとなる。まちづくりの基礎を考える時、歴史・文化・伝統を重んじ、伝承をしていくことが大切と考えている。

日本に京都があって良かったと、メルケル独首相にも言われ、京都の伝統を踏まえ、経済も治安も安定した京都を堅持したい」と静かに熱く語る、羅のさわやかな和服姿の門川京都市長であった。

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