我孫子の景観を育てる会 第36号　2010.3.20発行
発行人　吉澤淳一
我孫子市つくし野6-3-7
編集人　飯田俊二
シリーズ「我孫子らしさ」(13)　「わたしの我孫子」      　　　　　　濱田　洋子　（会員）
●シリーズも13回目となり、これまで「我孫子らしさ」については12人12色の「我孫子」が記されてきた。今年、我孫子市は市制40周年を迎える。我孫子の特長、すなわち「我孫子らしさ」の一つに“活発な市民活動”が取り上げられている。市民活動をしている代表的年代の一人として、私が我孫子とどのように出会い、「我孫子」をどのように考えたいか自分の視点で記してみたい。

[我孫子を感じた時]
●大都市周辺のベットタウン化の波に乗って昭和49年、世田谷区の社宅からつくし野7丁目（当時は我孫子920番地）に引っ越してきた。広島から老夫婦（私の両親）を加えて、7人家族の生活が始まった。

●終の棲家を我孫子と決めたのは、夫の通勤時間が許容圏内であることと、家の購入価格とが折り合ったという極めて現実的な理由であった。「北の鎌倉」というキャッチコピーは全く眼中になかった。ただ木造の我孫子駅に降り立って、瓦屋根の古い商家の町並みを見た時、懐かしさと安らぎを感じていた。その時から20年経て、駅前の景観は一変し、今に至っている。

●我孫子に住み始めた子らは、何処からかザリガニをバケツいっぱい持って来たり、鮒や雑魚を釣ってきて私を困惑させた。子ども達に遅れて、私が初めて手賀沼を目のあたりにしたのは引越し後1年くらい経ってからである。利根川の水害の脅威を体感したのは昭和56年であった。手賀沼の水質汚染全国ワースト１を脱出したのは平成14年、「よみがえれ手賀沼」を合言葉に、活動してきた市民の成果である。

●我孫子に暮らして36年、我孫子に生まれ育った地元の方の「ふるさと」観とは違うかもしれないけれど、終焉の地として我孫子の自然景観を愛おしく感じているこの頃である。

[手賀沼と利根川]
●「我孫子らしさ」を語るには、自然環境（風土）、地勢（地形）の変遷を知ることからだと思う。我孫子市の面積は約43.19平方�辧Ｋ未卜�れる利根川と南に位置する手賀沼に挟まれた海抜約20mのなだらかな台地が、東端の布佐から西端の我孫子まで約14�辧�南北に約4〜6�劼砲錣燭辰胴�がっている。		 ●台地一帯からは旧石器・縄文時代の遺跡が数多く発見され、「我孫子古墳群」は私たちに古代を語りかけてくれる。歴史を物語る遺跡も数多く残されている。大正・昭和初期には、手賀沼を一望し里山が連なる台地は、白樺派の文人や文化人たちの別荘地となり、我孫子に文化・芸術のかおりを残している。

●手賀沼沿いと利根川沿いの平らかに広がる水田地帯にも、利根川東遷の影響で起こる水害や、新田開発、手賀沼干拓事業の苦難の歴史が秘められている。
現在の手賀沼周辺に広がる田園風景は、戦後の昭和20年に始まり昭和43年に完成した国の食糧増産施策にもとづく手賀沼干拓事業がもたらした景観である。

[未来に繋ぐ「我孫子らしさ」]
●昭和56（1981）年に制定された“市民憲章”の前文には「田園教育文化都市をめざす市民としての誇りをもち、明日への願いをこめて、〜」とあり、5つの決意の一つに、「水と緑と土のにおいがいっぱいの　住みよい我孫子にします」とある。市民によって定められたものである。

●我孫子市の憲法ともいえる「基本構想」の見直しが始まっている。自然と共に人びとが営々と育んだ「我孫子らしさ」を未来に繋いでいくのは、我孫子に住む私たち一人ひとりである。自然環境は一度破壊したら二度と取り戻せない。どんな｢我孫子らしさ｣に方向付けていくのか共に考え、心豊かな住みよい我孫子を未来に繋いでいきたい。
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