入会に当って思うこと ―その1―                         桜井 幹喜(会員)
湖北公民館で「景観あびこ」38号を読ませていただきました。この夏、古希を迎え、引きこもり気味のぼくに娘が「外へ出る趣味を見つけたら?老化は足からだというよ」といって帽子と歩き易い新しいサンダルを買ってくれたのと、時期を前後して友だちが「人生八十年時代、年齢は七掛け。ぼくらは四十九歳だ」と便りをくれたのがきっかけで、市役所の湖北台支所を訪ねたのが始まりです。

「いろいろありますよ。あなたの所からだと湖北公民館に詳しい資料がありますよ」。昔、娘が通った湖北小学校の隣に公民館があり、たくさんの市民が利用しているようだ。娘が通っていた頃はまだ建っておらず、後年湖北支所を利用した時に、脇に立派な建物があるのに驚き、1階と2階を見て回った記憶がある。

自宅から自転車で安心して湖北小学校へ行く道は、成田街道から湖北駅側へ1本ずれた道で、途中からは畑になり、もう片側には市に指定されるような古木・巨木があり、かつての湖北村を作った農家の長屋門などがある。農道とは思えぬほど道幅は広く、自動車もほとんど通らなくて、藤沢周平の時代劇映画の撮影にも使えそうな趣だ。

ひょいと爪立てば手賀沼の水面の光が目に入るような気がするし、畑の果てを一段下がったところからは遥かに田んぼが広がっている。道の突き当たりに路地があって、それを入っていくと娘が小4から三年間通った学童保育「竹の子」があり、今きた道を道なりに右へまわるとすぐ小学校の運動場のフェンスが見えてくる。娘の母親(つまりぼくの妻)は身障手帳1級を持つ重度身障者で父母会や授業参観にはいつもぼくが参加した。運動会の時だけは母親も車椅子に乗って参加する。保育園で一緒だった男の子の家族に混ぜて貰って、朝一番に取ってあった場所で応援をし、昼食を食べた。

この道路を左へとるとすぐ成田街道に突き当たる。手押し信号式の交差点を渡らず、ぐるっと見回すとそこに湖北支所とさらに奥に公民館がある。用は済んだ。来た道を戻ろう。さっき入った道を左に曲がらず湖北駅の方に行けば、今の湖北を象徴する廃墟ビルが2つある。

ひとつはどんな取引先を想定していたか判らない大きな建坪の千葉興業銀行と、東武ストアマインの3階建てだ。街中にあった中小の小売店をなぎ倒すように潰し、一時期湖北地域の買い物センターのようなふりをしたにも拘わらず、思ったほど利益が上がらないと見るや住民に何の説明もなく「閉店します」の貼り紙1枚で撤収してしまった。
住民はどこへ買い物に行けば良いのか。完全な街破壊、くらし壊しだった。もともと湖北地区は大和の住宅団地とみどり台を除いて小規模開発が多く、乱雑に家が建ち人口だけは増えており、街づくりのプランがない。湖北駅南口は湖北台団地をはじめ駅前のロータリーなど計画性が感じられるが、北口は同じ駅の南北とも思われぬ違いだ。

もっとも南口にあった「カスミ」と並ぶ大型店「伊勢角」(魚の新鮮さが売りだった)も湖北台団地の中にあった「京成ストア」も姿を消し、ファミリーマートにいつの間に可成り変わっていた。世は車時代、郊外の大型店に客を取られスーパーマーケットさえ成り立っていないのか。湖北公民館にちょっとした用があって行っただけで、途中の景観は色々考えさせてくれました。

ところで、入手した会報38号に興味深いことが載っており、入会を申し込もうかと手にしているわけです。ひとつは小谷滋さんの文章です。ぼくたち一家が我孫子へ来たのは小谷さんのように余裕があってではなく、子を産み、子育ての環境を求め追い詰められてのものでした。当時は産休明け三ヶ月で乳児を預かってくれる施設のある自治体は少なく、当時住んでいた横浜市港南区にそんなものはなく、横浜中探してもあるかなしかでした。貸家暮らしでしたが、今度は安住できる住宅公団に住みたいとも思っていました。しかし、応募したら確実に当るところでなくてはなりません。

そこへ吉報が入りました。東京を通り越した千葉県の我孫子市に、市の助成を受け運営されている「ゆずり葉」という乳児保育があること、また駅からは遠いが湖北台団地という大きな団地があり、始終空き室募集しており、不人気で、まず当選も間違いないこと。早速応募し見事当選、めでたく引越しとなりました。まだ建って間もなくで植木も成長しておらず、住民も若く子供たちも沢山いました。ぼくら一家はまだ今ほど育っていないけやき並木のすぐ横の棟の一番道路ぎわ、バス停がすぐ下に見える2DKでした。

■次号に続く)
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我孫子の景観を育てる会の現況
  1.会員数 62名(2010年8月末現在)  会長 吉澤 淳一
  2.入会希望連絡先 吉澤淳一 Tel&Fax 04-7184-2856
  3.定例会 毎月第3土曜日(近隣センターこもれび) 但し 10月は第4土曜日

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