五重塔と景観                                 飯田 俊二(会員)   
五重塔とは、広辞苑によると、「仏舎利を祭る塔。五層の仏塔。」「地・水・火・風・空の五大をかたどった物」と記載されています。今、全国では、45棟ぐらいの五重塔がありますが、江戸時代以前建立の重要文化財、国宝の五重塔は全国に22あります。

私は、全国に点在する五重の塔めぐりをしています。30ケ所の五重塔を訪ねました。国宝の中では、あと2ケ所を残すのみとなりました。建っている場所はまちまちですが、その周囲の環境で随分感じが違ってきます。

テレビのドラマで京都を舞台とするものには、必ずと言っていいぐらい出てくるのは、東山の坂をバックにした五重塔(八坂の法観寺)。五重塔自体は、ぽつんとまちの中に立っていて、何てことはないのですが、坂を通して観ると、感じが変わってきます。一般的には、伽藍の隅のほうに建っているのが多いのですが、羽黒山の五重塔は森の中にぽつんと立っていて、周囲の自然に溶け込み厳かな感じを与えてくれます。

京都の教王護国寺(東寺)の五重塔は京都駅から見える最も大きい五重の塔で、シンボル的存在です。庭園の中に聳え立つ五重塔は壮観です。奈良の法隆寺の五重塔は、最も建立が古いものですが、寺としての調和の取れた配置になっており、そのなかでの五重塔は趣があります。参道からみる五重塔は又格別の景観を見せてくれます。周囲の環境とマッチしていることが、その存在を浮き上がらせてくれます。

我孫子のまちもそうであって欲しいと願っています。手賀沼と緑が我孫子の大きなテーマであると思っています。どこにでもある町にはなってほしくありません。ふれあいラインの根戸新田から手賀沼沿いに東方向の眺めはすばらしいです。でも電柱がなければ、広告の幟旗がなければ、もっとすばらしいものになると思っています。
また、我孫子駅前通りを八坂神社から見ると落ち着いた並木道でゆったりとしたいい通りと思うのですが、少し視線を上に向けると、北口のマンションの干し物が駅舎越しに目に飛び込んできて、がっかりさせられます。駅舎が少し高くなれば、解消するかもしれませんが。それぞれが法的には問題ないとのことですが、住民がすこしでも気配りし、特性を生かしたまちになればと願っています。


五重塔と景観

竹灯篭の夕べ 〜幻想的なライトアップで文化財を演出〜
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竹灯篭の夕べ
撮影:矢野正男さん

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