〜前会長吉澤淳一さんの、当会18年間を振り返った回顧録を、93・94・95号に続き掲載します〜
           吉澤 淳一(会員)                          
  市民観桜会
【きっかけ】
市民観桜会は日立庭園公開開始の翌春、平成15年(2003年)から始まった。会の設立から間もなく経った頃、冨樫さんが「市内にこんな素晴らしい環境があるのだから、市民への公開をお願いしたらどうだろうか」と会に提案された。私はこのコースでプレーをしたことが無かったが、日本でも屈指の名門コースであることは知っていた。

ゴルフ場に対しては、以前から一般論として環境破壊や農薬使用が話題になっていたことなどから、会の中では消極的な意見もあった。しかし冨樫さんの会員への説得は粘り強く、このゴルフ場の景観的素晴らしさを力説していたのをよく記憶している。「手賀沼と利根川に囲まれた台地を利用して、その自然を壊すことなく、山も、谷も、沢もそのままに作ったものである。」(景観あびこ37号「ゴルフ場その自然の景観」より抜粋)■37号P5へ

当時の支配人吉田富士男さんも公開による地域貢献に積極的で、特に自慢の桜を見てもらいたいと仰っていた。やがて会員のやがて会員の理解が進み、平成15年の3月末に開催の運びとなった。

【初めての開催】
どうせやるのなら、ゴルフ場自慢の桜に合わせようということになった。定員500人の事前申込制にしたが、生憎開花前でかなり寂しかったという記憶がある。記録でも正確な入場者数は不明である。最初は「市民観桜会」という名称ではなく、「我孫子ゴルフ倶楽部の一部を公開」という呼びかけで始めたが、以降毎年桜の時期での開催にして、2回目から「市民観桜会」という名称にした。

最初の公開で印象的だったのは、公開の模様がゴルフ雑誌「週刊パーゴルフ」(当初は隔週刊)のグラビア紙面に掲載されたことである。毎号有名プレーヤーの顔が表紙 を飾る売れ筋の雑誌に載るとは驚きであった(この号の表紙はタイガーウッズ)。

掲載の経緯はこうだ。それは、知人の画家で、 隣接する岡発戸都部の谷津を保護するグループのメンバーでもあった女性からの申し入れによるものだった。夫君がこの雑誌のカメラマンをしていて、珍しいイベントなので取材をしたいというもの。吉田支配人の快諾も得て、当日冨樫さんと吉田支配人に対応してもらった。記事中二人のコメントが載っている。この言葉がその後の継続につながっていくので、長くなるが紹介する。
「世界の青木功、海老原清治を輩出した、伝統あるゴルフ場がここにあることを知らない市民もいます。この素晴らしいコースを、多くの市民に見てもらいたかったのです」(我孫子の景観を育てる会顧問の冨樫道廣さん)「ゴルフをしない人にもゴルフやゴルフ場をもっと知ってもらいたい。これからも是非協力したいですね」(吉田富士男支配人)記事の結びは「このような地域密着型のゴルフ場イベントがどんどん生まれて行ってほしいものだ」とあり、力強く背中を押してもらった。

●2005年4月11日の観桜会
【一発勝負】
この催しは予備日のない一発勝負で、天候と開花状況には泣かされたものだ。雨で中止が3回(内1回は 開場直後に中止)、開催したが開花前が3回、葉桜が1回。他に、東日本大震災、コース大改造でそれぞれ休止した。それでも7回は7分咲き〜満開の花の下で開催できた。その点日立庭園公開は、予備日を設けることができ、翌日順延が2回あったが、雨で中止は一度もなかったことは奇跡に近い。

そんな中で、“晴、温暖、満開”の三拍子そろった開催が平成25年に一度だけあった。前日雨、翌・翌々日雨の谷間の僥倖であった。この時の来場者は 2251人、最高は平成27年の2543人であった。

一方、一分咲きでちらほら状態でも天気が良いとお客さんが大勢来たことがあった。平成21年の2357人(第2位)がそれである。冨樫さんの持論「ここの良さは桜だけではなく、この空間が魅力なのである」

【アクセス】
来場者は五本松公園側の特設入口から入場するので、近隣の方以外は車の利用になる。駐車場は確保してある。正門であれば天王台駅、我孫子駅、東我孫子駅からバスや徒歩で来られるが、特設入口では近くに公共交通機関の駅や停留所が無い。休日に運行するバスの停留所は近くにあるが、開催が月曜日なので運行していない。天王台駅 の案内係もタクシーか、約40分の徒歩を勧めるしかない。チラシをよく見ない人やナビの利用者は正門に来てしまう。ここにも案内係を置いて、徒歩(自転車)用・車用の迂回路マップを渡すが、「そんなあ!」ということで時には苦情対応となる。湖北台の最寄りのバス停とそこから会場までの中間に案内係を置いたりしたが、ほとんど利用者がいなかったという笑えない話もあった。

あの手この手を考えてみたが、入り口を変えない限り、天王台からのシャトルマイクロバスぐらいしか思いつかない。 これは長年の懸案事項であるが、クラブ側の対応は難しいこ とはわかっていた。今回、会の方で運行する試みを決めたことは、後述のトイレ問題と併せて、現執行部のいい判断であった。

【運営】
市民観桜会も日立庭園公開も、運営の基本は同じだが、主として、前者はコース管理への配慮と広さ対策に意を用い、後者は庭園管理、人の流れ、近隣対策、もてなし面に留意した。
場内管理は、当初バンカーとグリーンをロープで囲った程度だったが、すぐに大掛かりなローピングに切り替えた。13番の急斜面も開放していたが、池への転落等を危惧して立ち入り禁止にした。こうしたローピングには、市役所や倶楽部から資材借用を受けている。重い鉄杭の運搬には、倶楽部より借用の電動カートが縦横無尽の働きをするが、危険を伴うので運転者を限定している。ゴルファーが使用する電動カートは通常舗装されたカート道を走るが、このイベントではカート道だけではなく様々な場所を移動するので、樹木や来場者との接触、斜面での横転等に注意が必要である。

トイレは、入り口から一番遠い13番の茶店一カ所のみなので、入り口近くに仮設トイレを設置している。約5万円かかり平均総コストの3分の1を占める。受付担当者の話では、どうも利用率は低いようだ。今回、仮設トイレを廃止して、スタッフが食事をする近くのトイレを一般にも使用させてもらうという提案に快く応じていただき、そこで浮いた費用を前述のシャトルマイクロバスの運行に充てるというアイデアが素晴らしい。

運営に当たっては、日立庭園公開と同様キメの細かい諸準備・諸作業の上に成り立っている。しかもスタッフは当日はほとんど立ちっぱなしなのだ。会、三樹会、庭園公開サポーター、旧村川別荘市民ガイド、社協募集のボランティア、コカリナグループの皆さんに感謝である。
   ■P3へ続く
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