我孫子の景観を育てる会 景観あびこ_title 第117号 2023.9.16発行
発行人 中塚和枝
我孫子市緑2-1-8
Tel 04-7182-7272
編集人 大久保慎吾
世界の街角景観 −3−  サルバドール(ブラジル)         高 康治(会員)  
  地球儀を手に取って見ると、日本のほぼ反対側にあるのがブラジル。国土面積は我が国の22倍以上もあり、今や世界的に注目されているグローバルサウス(新興国・途上国)の代表国とされる。1994年と2003年の2度しか行っていないが、同国の主要都市は全てと言ってよいほど訪問済みだ。
  例えば、華やかなカーニバルやボサノバ音楽の発祥地として知られ1960年まで首都だったリオ・デ・ジャネイロ、新首都の未来都市ブラジリア、東洋人街がある南米最大の都市サンパウロ、コーヒーの輸出港と知られるブラジル最大の港湾都市サントス、世界最大の河川アマゾンの河口に位置するベレンと中流のマナウス、「ブラジルのベニス」と称されるレシフェ、砂糖貿易で栄えたコロニアル建築が残るオリンダ、雄大なイグアスの滝の観光拠点フォス・ド・イグアス、世界有数の大湿原パンタナールの中心都市クイアバ、ベネズエラとの国境に近い計画都市ホア・ビスタなど。

  だが最も忘れ難いのは、「黒人のローマ」と讃えられるサルバドールである。ブラジル北東部の大西洋岸に面し、1763年リオ・デ・ジャネイロ遷都までの214年間、ブラジル最初の首都として栄えた。バイーアとも呼ばれる古都は現在もポルトガル統治時代の古い建物が多数残り、歴史地区は1985年に世界遺産登録された。特にこの街がブラジルの他の都市と大きく異なり旅人を魅了するのは、アフリカの香りがすることだ。約290万人の住民の9割近くが黒人や、黒人とインディヘナの混血(サンボ)が占め、いたる所でダイナミックなアフロ音楽が溢れる。我々が普段見かける太平洋を中心とする世界地図ではなく、丸い地球儀を見ると大西洋を挟んで南米の対岸にあるのがアフリカ大陸。実はブラジルと西アフリカは意外に近い。
地図1:ブラジル・アフリカ地図
 
  観光の中心となる旧市街セントロは、丘陵地にある上町とトドス・オス・サントス湾に面する港のある下町に分れる。見どころがいっぱいの旧市街の中でも、最も人気のあるスポットが上町にあるペロウリーニョ広場。植民地時代の名残を留めるカラフルな建物が並び、パステル調のピンクやブルーに塗れられたコロニアルな建物が石畳の広場を囲む。特に注目すべきはブルーの建物で、かつて砂糖キビ栽培の労働力としてアフリカから連れて来られた黒人の奴隷市場があった所だ。広場から坂道を少し下ったところに建つパステルブルーの建物は、1704年築のホザーリオ・ドス・プレートス教会(下の写真1)
写真1:ペロウリーニョ広場
ホザーリオ・ドス・プレートス教会

    黒人奴隷が造った歴史があり、現在も黒人だけの修道会が運営している由。また広場周辺はホテル・みやげ物屋・バーなどが多く、夜になると広場ではライブショーが行われ遅くまで賑わう。
 この広場から南西方向に200mほど歩くと、正式名称が11月15日広場というジェズス広場に出る。広場をぶらぶら散策中に5人の妙齢?の陽気な黒人の女性たちに声をかけられ、仲良く記念撮影したが、彼女たちの鮮やかなアフロファッションが印象的だった(下の写真2)
写真2:ジェズス広場で現地女性と記念写真

  また人通りの多い広場では様々な大道芸が披露され、中でもダンスの要素を含んだ伝統的な格闘技カポエイラが見もの。元々武器を持たない奴隷階級の自己防衛術として発達したものだが、汗で光る黒人の体が躍動するのが圧巻。

  ところで、サルバドールには1年の日数(365)と同じほどの教会があると言われる。特に多いのがジェズス広場周辺。代表的なものとして、広場の北西側にある1662年築のバシリカ大寺院。バロック様式の外観が格別に美しく、ファサード(建物の正面)がポルトガル本国のコインブラの新大聖堂に似ている。広場から南東方向に歩いて約3分のサン・フランシスコ教会は、1723年に建てられたバロック様式が素晴らしい(下の写真3)
写真3:サン・フランシスコ教会

  「黄金の教会」とも呼ばれるだけにファサードが金の彫刻で埋め尽くされ、内部の壁や天井もふんだんに金粉が使われて見事。ほかにサンペドロ教会やオルデン・テルセイラ・サン・ドミンゴス教会などがある。

  この広場からセー広場を通り過ぎて約400m南西方向に向かうと、高さ73mのラセルダ・エレベーターがある。このエレベータに乗って下りると下町に着き、トドス・オス・サントス湾に臨む海岸地区に出る。その一角にバイーアの民芸品なら何でも揃うメルカード・モデロという市場があり、ここから見上げる上町の街並みは情緒豊かだ(下の写真4)。因みに、市場の地下はかつて黒人奴隷が収容されたところで、日中でも薄暗く少々不気味。
写真4:下町より上町を見上げる
(左端がエレベーター)
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